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Ryusuke Ueki - 08 May, 2026
KAIROS とは——Claude Code の常駐型エージェント・モードを解説
KAIROS:Claude Code の常駐型エージェント・モード やさしいAI研究所の植木です。弊所では、単なる対話型AIを超えて、「自律的に動くAIパートナー」の研究開発を行っています。 Claude Codeの流出したソースコードが非常に勉強になっているので、その中の「KAIROS」についてまとめました。 KAIROS とは KAIROS は Claude Code の アシスタントモード(Assistant Mode) の内部コードネームです。 通常の「一問一答型」セッションではなく、長期稼働・永続セッションとして動作するモードです。 通常の Claude Code が「呼ばれたら答えるツール」なのに対し、KAIROS は 「常に稼働していて、自分から動き・通知し・記憶を積み上げていく常駐エージェント」 として使うことを想定されています。 特徴1: 席を外している間も作業が進む 通常モードはユーザーが都度プロンプトを入力する必要がありますが、KAIROS では Cronスケジューリングにより、指定した時刻や間隔で自律的にタスクを実行できます。 例えば「毎朝9時にPRを確認してサマリーを送る」といった運用が可能です。長時間タスクが完了したときや問題が発生したときに能動的に作業完了の通知を受け取れます(プッシュ通知も対応)。 特徴2: 外部チャンネルから直接指示できる Slack、Discord、SMS などの MCP サーバー経由でメッセージをセッションに注入できます。 Claude Code を起動したまま、チャットツールから指示を出してリプライを受け取るような使い方ができます。 特徴3: GitHub PR の変化を自動検知して対応できる SubscribePRTool(KAIROS_GITHUB_WEBHOOKS)により、PRのイベント(レビューコメント、CI 失敗など)を受信して自動応答・自動修正するワークフローが構築できます。 特徴4: セッションが永続するので文脈が途切れない 通常セッションはプロセスを終了すると履歴が消えますが、KAIROS では bridge が perpetual = true で動作し、再起動後も同じセッションを再開できます。 特徴5: 長期記憶が自動で蓄積される Daily Log に作業内容・ユーザーの嗜好・プロジェクトの文脈を追記し続け、夜間のAuto Dreamが MEMORY.md に蒸留します。 「先週話したあの件」を毎回説明し直す必要がなくなります。 弊所としては「長期記憶」の部分をもう少し掘り下げていきます。「長期記憶」は、AI(エージェント)が過去の対話内容、ユーザーの好み、プロジェクトの文脈などを一時的なセッション(会話)の枠を超えて保持し、将来の動作に反映させる仕組みです。特に Claude Code の KAIROSにおける長期記憶は、単なる「ログの保存」ではなく、「情報の整理と蒸留(エッセンスの抽出)」に重きを置いて設計されていそうです。Daily Log は「書く負荷を小さく(追記だけ)、整理は非同期でまとめてやる」という設計で、長期稼働するアシスタントが MEMORY.md を書き換え続けることで生じる競合やキャッシュ破壊を避けるための仕組みです。Auto Dreamは、溜まった Daily Log を整理し、真に重要な情報を MEMORY.md へ統合する「睡眠中の脳」のような非同期処理になっています。分類 Claude Code での役割 内容短期記憶 コンテキストウィンドウ 現在進行中の会話の内容。ブラウザを閉じたりプロセスを終了すると消える。中期記憶 Daily Log その日の出来事や修正指示を「とりあえず書き留めた」備忘録。長期記憶 MEMORY.md 重要な習慣、ルール、プロジェクトの根幹情報を「定着」させたもの。Daily Log とは KAIROS専用の追記型メモリ記録方式です。日付別ログファイルになっています。 通常の Claude Code が MEMORY.md をリアルタイムで読み書きするのに対し、アシスタントモードではセッションが長期間継続するため、別の設計が採用されています。 Claude に対して指示される書き込みルール システムプロンプトでモデルに以下が指示されます(src/memdir/memdir.ts):今日のログファイルに追記のみする(書き直し・再編成は禁止) エントリは短いタイムスタンプ付きの箇条書きで書く ファイルが存在しない場合は新規作成する(親ディレクトリごと) 日付が変わったら新しい日付のファイルに切り替えるログに記録すべき内容ユーザーの修正・好み("npm ではなく bun を使って" など) ユーザーの役割・目標に関する事実 コードから導出できないプロジェクト文脈(締め切り・障害・意思決定の理由) 外部システムへのポインタ(Grafana、Linear など) ユーザーが明示的に記憶を求めたことAuto Dream とは ログが溜まると、別プロセスとして /dream スキルが起動し、ログを MEMORY.md に蒸留します。 起動条件(src/services/autoDream/autoDream.ts)時間ゲート: 前回の蒸留から >= 24時間(minHours) セッションゲート: 前回以降に更新されたセッションが >= 5件(minSessions) ロック: 他プロセスが蒸留中でないことAuto Dreamの 4 フェーズ 実行されると、以下を順番に実行します(src/services/autoDream/consolidationPrompt.ts):Orient: logs・既存トピックファイル・MEMORY.md を俯瞰する Gather recent signal: 日次ログを主なソースとして新しい情報を収集(トランスクリプトは最終手段) Consolidate: 新しい情報を既存トピックファイルにマージ、矛盾を解消、相対日付を絶対日付に変換 Prune and index: MEMORY.md を 200 行・25KB 以内に保つよう刈り込み・整理まとめ Claude CodeのAuto Dreamは、単なるタスク処理の履歴ではなく、ユーザーの「価値観」や「意思決定の癖」を MEMORY.md に蓄積していくことになります。AIは単なるツールから、ユーザーの意図を先回りして汲み取る「理解者(パートナー)」へと進化していきます。
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Etsuko Mera - 07 May, 2026
ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #3 VS Code版を入れて、地獄のダウンロードフォルダを救出してみた
はじめに こんにちは、広報・制作担当のmeraです。 #1 インストール編で土台を整え、#2 プライバシー設定編で気持ちの安全を確保した私は、ようやく「何かに使ってみたい」というフェーズに来ました。 そこで思い出したのが、私の最大の弱点です。「ダウンロードフォルダ、入社してから一度も整理してなくない……?」恐る恐る開いてみると、そこには1.5GBほどの、なかなかの混沌絵巻。 スクリーンショット200枚以上、誰から送られてきたか思い出せないPDF、ダウンロードしてそのままのZIP、業務で使ったデザイン素材、なぜか落ちているよく分からないDMG、もう使う予定のない Resume_final_FINAL_v3.docx。 たった1ヶ月でこの量。AIに頼ろう。 というわけで第3回は、Claude Code for VS Code(Claude CodeのVS Code拡張) を導入し、ダウンロードフォルダを救出する話です。今回はストーリー仕立てでお送りします。実際にやってみる方のために、巻末に「再現用の手順サマリー」をつけました。気持ちより手順から知りたい方は、目次から「巻末:ダウンロードフォルダ整理 手順サマリー」へジャンプしてください。この記事で学べることVS Codeに「Claude Code for VS Code」拡張を入れる流れ ノンエンジニアが、AIに「整理して」とお願いするときのコツ 機密ファイルを誤って動かさないための事前ルール作り 巻末に、すぐ真似できる手順サマリー第1幕: 入社1ヶ月、「整理しよう」を見て見ぬふりしてきた... 正直に告白します。 私のダウンロードフォルダは、入社からの1ヶ月、「気が向いたときに整理しよう」と思いつつ、そのまま放置した結果です。 ファイル数 約420個。サイズは 1.5GB。新しい職場のペースに慣れるので精一杯で、ストレージのことなんてすっかり忘れていました。 普通の整理術の本を読むと、「フォルダを分けて、定期的に見直そう」と書いてあります。 正論。完全に正論。なのですが、ファイル420個を1つずつ見て分類する元気は、いまの私にはないのです。 そこで、Claude Codeに頼みます。 ただし、いきなり「全部やって」と言うのは怖いので、目で進捗を見ながら確認できるVS Code拡張を使うことにしました。第2幕: Claude Code for VS Code を入れる VS Codeはすでに入れてあったので、拡張機能のインストールはとてもシンプルでした。VS Codeの左サイドバーから、拡張機能(Extensions) のアイコンを開く 検索窓に「Claude Code」と入力 Anthropic が提供している「Claude Code」を選んで Install インストール後、左サイドバーにClaude Codeのアイコンが追加されるここでなぜか少し緊張しました。 それは、「拡張機能を入れる」という行為そのものに対してではなく、「いよいよ私が、コードを書く人と同じ画面に踏み込む」という気持ちの問題でした。 でも、入れてしまえばあとはこっちのもの。 サイドバーから Claude のアイコンをクリック → ログイン状態を確認 → チャット欄が現れる。 ここに、お願いを書き込んでいきます。拡張機能版のいいところは、 ファイルツリーを目で見ながらチャットできる こと。「このファイル動かして」とドラッグ&ドロップ感覚で会話できるのが、ノンエンジニアにはありがたい。第3幕: いきなり「整理して」と言わない ここでハマりがちなのが、いきなり「ダウンロードフォルダを整理してください」と一言で投げてしまうこと。 これをやると、AIは「全部開いて、勝手に分類して、勝手に動かす」という、こちらの想像とズレた動きをすることがあります。 私が選んだ手順は、「会議のように、まず方針を決める」 でした。 VS Codeで、ダウンロードフォルダ(~/Downloads/)を開き、Claude Codeのチャット欄にこう打ちました。ダウンロードフォルダの整理を手伝ってほしいです。 いきなり動かさず、まずは中にどんな種類のファイルがどれくらいあるかを、ざっくり集計して教えてください。 機密性が高そうなファイル(契約書、源泉徴収票、社内資料など)は、絶対に勝手に動かさないでください。数秒後、Claude Codeはターミナル風の表示でフォルダを覗き込み、こんな返事をくれました(要約しています)。カテゴリ だいたいの数 備考画像(png/jpg/heic) 約280 9割がスクリーンショットPDF 約40 業務資料・参考記事が混在ZIP 約12 フォント、素材、配布物インストーラ(dmg/pkg) 約8 業務で使うアプリ類動画(mp4/mov) 約8 撮影素材と画面録画Officeファイル(docx/xlsx/pptx) 約25 個人/業務 混在そのほか 残り csv、テキスト、ai、psd、etc.このリストを見たとき、初めて自分のダウンロードフォルダがどんな状態かを客観視できました。 これだけでも、整理の作戦が立てられる。「現状把握」って、こんなに価値があるんだとしみじみ。第4幕: 「触ってOKなもの」と「触ってほしくないもの」を線引きする 私はここで、CLAUDE.md をダウンロードフォルダに置き、ルールを書きました(ファイル名やフォルダ名は仮のものです)。 # CLAUDE.md(ダウンロードフォルダ整理ルール)## ゴール- ~/Downloads/ の中身を、用途別フォルダに分けて整理する - ファイル名にだけ頼らず、可能な範囲で中身も判断材料にする - 100MB以上の大きなファイルは「アーカイブ候補」として一覧化する## 触ってOKなもの- 画像(.png .jpg .jpeg .heic) - ZIP / DMG / PKG(古いインストーラ) - 一般的な配布素材(配布物だと明らかなもの)## 動かす前に必ず確認するもの- PDF全般(中身を要約してから判断) - 「請求書」「領収書」「契約」「源泉」などの語を含むファイル - 取引先名や個人名を含むファイル## 絶対に動かさない・開かないもの- ファイル名に「機密」「社外秘」「NDA」を含むファイル - 拡張子が .keychain / .key / .p12 のファイル - 隠しファイル(. から始まるファイル)## 出力先のフォルダ構成(これを新規作成してOK)- ~/Downloads/*整理済み/01*画像/ - ~/Downloads/*整理済み/02_PDF*業務/ - ~/Downloads/*整理済み/03_PDF*個人/ - ~/Downloads/*整理済み/04*インストーラ/ - ~/Downloads/*整理済み/05*素材ZIP/ - ~/Downloads/*整理済み/99*要確認/このルールをチャットに渡してから、「まずは画像だけ動かしてみてください」とお願いしました。 1カテゴリずつ進めるのがコツです。これは仕事と同じで、「全部一気に」を避けると失敗が激減します。ここでの最大のポイントは 「動かす前に、まず提案を出してもらう」 ことです。Claude Codeに「こう動かしますがいいですか?」と聞いてもらってから、「はい、お願いします」と返す流れにしておくと、誤爆がほぼなくなります。第5幕: 動き出すAI、見守る私 画像の移動は、スクリプトをClaude Codeが書き、私が中身を読んで承認したうえで実行する形になりました。 スクリプトと言うと身構えますが、要するに「これとこれをここに動かしますよ」というレシピです。 実際の流れは、こんな感じでした。Claude Codeが move_images.sh のような短いスクリプトを書く 私が中身を読む(知らないコマンドが出てきたら、その場で意味を聞く) 「OK」と返事をする 実行され、画像280枚ほどが 01_画像/ フォルダに移動する 移動後、ダウンロードフォルダ直下が一気に静かになるVS Codeのファイルツリーが、目に見えてスッキリしていきます。 自分でやったら半日かかる作業が、10分で終わりました。 PDFについては、Claude Codeに1ファイルずつ要約してもらいながら、請求書 → 02_PDF_業務/ 個人の保険資料 → 03_PDF_個人/ 中身が業務NDA系っぽい → 動かさず 99_要確認/ にメモだけ残すという判断を、二人三脚で進めました。 判断に迷うものは、全部 99_要確認/ に逃がすのが結果的に一番ラクでした。完璧主義を捨てるのも、AIと付き合うコツかもしれません。第6幕: アーカイブと、これからの運用 整理が終わったあと、Claude Codeに最後の仕事を頼みました。100MB以上のファイルがあれば、_archive_候補.md というファイルにリストアップしてください。 リストには「ファイル名」「サイズ」「ダウンロード日」を入れてください。数秒で、移行候補リストが出来上がりました。 私はそれを眺めて、外付けSSDに移すものと、もう削除していいものを仕分け。 「捨てる」を一気にやらず、まずは「外に置く」を経由するのが、心理的にも安全でした。 最終的に、ダウンロードフォルダはこんな状態になりました。指標 整理前 整理後ファイル数 約420 直下: 0 / 整理済み配下: 約420(分類済み)容量 1.5GB 0.4GB(残りはアーカイブ候補に隔離)「いま何が入ってる?」 分からない 1コマンドで一覧化できる心の重さ 1kg 0.1kg1ヶ月分のモヤモヤが、ほぼ消えました。ノンエンジニアの私が学んだこと ここまでやってみて、いちばん大事だと感じたのは技術ではありません。AIに「整理してくれ」と丸投げしない 「ルール」と「ゴール」と「触っちゃダメなもの」を、文章で先に渡す 1カテゴリずつ、提案 → 承認 → 実行で進める 判断に迷うものは、その場で決めず「要確認」フォルダに退避 完璧を目指さず、80点で十分とするつまり、AIをマネジメントする力こそが、ノンエンジニアの私たちが磨ける武器なんだと思いました。 コードを書けなくても、 「やってほしいこと」と「絶対にやってほしくないこと」 を言葉にできる人は、AIをすごく上手に使えます。それは、まさに広報・制作の現場で日々鍛えてきた力でもあります。まとめClaude Code for VS Codeは、ファイルツリーを見ながら会話できるのでノンエンジニア向き いきなり整理させず、まず現状把握を依頼するのが鉄則 CLAUDE.md でルール・ゴール・禁止事項を先に渡すと事故が減る 1カテゴリずつ、提案 → 承認 → 実行で進める 迷うものは 99_要確認/ に逃がし、判断は人間が後でまとめてやる 整理後は、アクセス頻度や容量で自動的に「アーカイブ候補リスト」 を作ってもらう1ヶ月放置していたフォルダが、半日もかからず生まれ変わりました。 「自分の苦手」を、AIにそっと預けられるようになると、仕事も生活もずいぶん軽くなります。巻末:ダウンロードフォルダ整理 手順サマリー ここからは、自分でやってみたい方のための再現手順です。 ※環境は MacBook Pro / Claude Pro契約 / VS Code を前提にしています。 Step 0: 準備Claude Codeをインストール済みであること(#1) プライバシー設定を確認済みであること(#2) Time Machineなどでバックアップを取っておく VS CodeをインストールしておくStep 1: VS Code拡張のインストールVS Codeを開く 左サイドバーの 拡張機能(Extensions) を開く 検索窓に「Claude Code」と入力 Anthropic製の「Claude Code」拡張をインストール サイドバーに表示されたClaude Codeアイコンをクリックし、ログイン状態を確認Step 2: ダウンロードフォルダをVS Codeで開くVS Codeのメニューから File → Open Folder… を選ぶ ~/Downloads/ を選択して開く ファイルツリーに大量のファイルが現れることを覚悟するStep 3: ルールファイル CLAUDE.md を作るダウンロードフォルダ直下に CLAUDE.md を新規作成 「ゴール」「触ってOK」「動かす前に確認」「絶対に動かさない」「出力先フォルダ構成」を書く 触らせたくないファイル名・拡張子・ディレクトリを必ず明記Step 4: まず「現状把握」だけを依頼 Claude Codeのチャット欄に、以下のような依頼を投げる。 ダウンロードフォルダの中身を、種類ごとにざっくり集計してください。 ファイルは絶対に動かさず、まずはレポートだけお願いします。Step 5: カテゴリ別に「提案 → 承認 → 実行」で進める 各カテゴリについて、以下の流れを繰り返す。「画像だけ整理したいです。動かす前に、提案を出してください」 提案された移動先・スクリプトの内容を確認する 「OK、お願いします」と返事して実行 完了後、VS Codeのファイルツリーで結果を確認Step 6: 迷ったら「要確認フォルダ」に退避 判断に迷うファイルは、すべて _整理済み/99_要確認/ に移動するよう依頼。 人間の判断は、まとめて後日やる。 Step 7: アーカイブ候補リストを作ってもらう 100MB以上のファイルを `_archive_候補.md` に書き出してください。 ファイル名・サイズ・ダウンロード日を含めてください。候補リストを見て、外付けSSDに移すか・削除するかを人間が判断。 Step 8: 仕上げダウンロードフォルダ直下のファイル数を確認(理想は0) CLAUDE.md を更新して、今後の運用ルールを書き残す 「次回からは月1回、軽く整理しようね」と自分に約束する次に読むのがおすすめの記事ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #1 まずはインストール編 ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #2 設定で情報を漏らさない - プライバシー設定編参考文献・出典Claude Code 公式ドキュメント Visual Studio Code 公式サイト Anthropic プライバシーポリシー
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Etsuko Mera - 01 May, 2026
ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #2 設定で情報を漏らさない - プライバシー設定編
はじめに こんにちは、広報・制作担当のmeraです。 前回、無事にMacBook ProにClaude Codeを入れることができ、感動の「hello.md」生成までこぎつけました。 ところが、その夜。 布団の中でふと、こんな考えが頭をよぎります。「あれ……Claude Codeって、私のフォルダ内のファイル読んでるんだよね? ということは、社内の制作データとか、まだ非公開のブログ下書きも、 もしかしてAnthropicの学習に使われちゃってる……?」シャキッと目が覚めました。 広報・制作の仕事は、未発表の情報をたくさん扱います。便利さと引き換えに、何を渡しているのか分からないのは、さすがに気持ち悪い。 ということで第2回は、「Claude Codeに自分の情報を渡しすぎないための設定」を、ノンエンジニアの目線で整えていきます。この記事では、私が安心して使うために確認した「データの扱い」「学習利用のオプトアウト」「ファイルの読み込み範囲」の3点を中心に整理します。具体的なメニュー名や挙動は、Anthropic側のアップデートで変わることがあります。実際に設定するときは、必ず[公式のプライバシーポリシー](https://www.anthropic.com/legal/privacy)と[Claude Code 公式ドキュメント](https://docs.claude.com/)も合わせて確認してください。この記事で学べることClaude Codeで「何のデータが、どこに送られているのか」のざっくり全体像 学習利用(モデル改善)のオプトアウトの考え方 ファイル単位で「これは見せたくない」を実現する方法 ノンエンジニアでもできる、最低限のチェックリストまず大前提:Claude Codeは「ローカルのファイルを読む」道具 Claude Codeのいちばんの魅力は、自分のMacの中のファイルを読んだり、書いたりしてくれるところです。 裏を返すと、便利さの源泉は「ファイルにアクセスできる」点であり、ここを止めてしまうと、ただのチャットになってしまいます。 なので、私たちが目指すのは「全部ブロックする」ことではなく、どの範囲のファイルを読ませるか をコントロールすること やり取りした会話やコードが、Anthropicの学習に使われない ことを確認すること 本当に渡したくないファイルや情報 を、最初から触れない場所に置くことの3つのバランスです。「便利 vs 不安」は、ゼロか100かではなくグラデーションで考えるのがおすすめ。100%安全な道具は存在しないので、「自分が許せる範囲」を決めることが、長く付き合うコツです。設定その1: 学習利用(モデル改善)のオプトアウト 最初に押さえたいのは、「自分の会話やコードが、AIの学習(モデル改善)に使われるかどうか」です。 ここはノンエンジニアにとっていちばん誤解しやすいポイントなので、丁寧に書いておきます。 Anthropicは2025年9月の方針更新で、消費者向けプラン(Free / Pro / Max) におけるデータ利用方針を変更しました。現在は、設定画面の「Help improve Claude」トグルをオフにしないかぎり、会話やコーディングセッションのデータがモデル改善の学習に使われる可能性があります。これは、Pro / Maxアカウントから利用するClaude Codeにも同じ方針が適用されます。 一方で、Claude for Work(Team / Enterprise)、Claude for Education、Claude for Government、API利用は対象外です。これらの法人・開発者向けプランでは、引き続き標準でモデル学習にデータが使われない運用です。 データ保持期間も、選択によって変わります。学習利用に同意した場合は最大5年、オフのままなら従来通り30日です。 ノンエンジニアの私が確認したのは、次の3点です。チェック項目 確認場所 私の選択Claude.ai側のデータ利用設定 claude.ai → Settings → Privacy → Help improve Claude オフフィードバック(👍/👎)送信時の挙動 各回答の下のボタン説明 業務会話では基本的に押さないClaude Codeでの「会話送信」の扱い Claude Code起動時のお知らせ・ドキュメント 内容を読んだ上で同意する重要なのは、「個人プラン(Free / Pro / Max)」と「法人・開発者プラン(Team / Enterprise / Education / Government / API)」で、データ取り扱いの初期値が違うことです。私はProアカウントなので、明示的に「Help improve Claude」をオフにする必要がありました。会社のチームで使うなら、TeamやEnterpriseプランの方が取り決めが明確で安心、というケースもあります。具体的に、私はclaude.aiの設定画面を以下の流れで確認しました。右上のアイコン → Settings Privacy タブを開く 「Help improve Claude」をオフにする データのエクスポートや削除に関する項目が用意されていることを確認しておく(いざというときに使える、と知っておくだけで安心感が違う)これだけで、「私の会話が勝手に教材になっている」という曖昧な不安は、かなり輪郭がはっきりします。設定その2: フィードバック・テレメトリの扱いを見直す Claude Codeはコマンドラインのツールなので、ターミナルで動いている間に使い心地のデータ(テレメトリ) がAnthropic側に送られている場合があります。 これは、エラーが起きたときの原因調査や、機能改善のためのものです。 ノンエンジニア視点で大事なのは、「会話の中身そのもの」と「使い心地のデータ」は別物として整理する 完全に止めたければ、設定でオフにする手段が用意されているかをドキュメントで確認する どうしても気になるファイルやプロジェクトでは、そもそもClaude Codeを起動しないフォルダを作るの3点です。 私は、機密度の高い社内データは「Claude Codeを起動するフォルダの外」に置いておく、というルールを自分の中で作りました。 ツールの設定だけでなく、自分の運用ルールを整えるほうが、結果的に強いです。設定その3: 「読ませない」を仕組みで作る Claude Codeは、起動したフォルダ(と、その中)を中心にファイルを見にいきます。 つまり、起動するフォルダを選ぶことが、最強のプライバシー設定だったりします。 私はこんなふうにフォルダを分けました。フォルダ 用途 Claude Codeを起動する?~/Documents/AI実験/ Claude Codeで遊んだり試す場所 ◎ する~/Documents/お仕事/制作物/ クライアントの公開済み素材 ○ 必要に応じて~/Documents/お仕事/未発表/ NDA案件、未発表のリリース原稿 ✕ 起動しない~/Desktop/メモ/ 個人的な日記やプライベートメモ ✕ 起動しないさらに、Claude Codeを起動するフォルダの中でも、「読ませたくないファイルやサブフォルダ」 を指示する仕組みがあります。プロジェクトのルールを書いておくファイル(CLAUDE.mdなど)を活用すると、このフォルダは触らないでね このファイルの中身は読まないでね 〇〇という情報はチャットに書き写さないでねといったお願いを明文化しておけます。完全な強制ではないものの、AIへの「業務上の禁則事項」として効いてくれます。 # CLAUDE.md(プロジェクトのルール例)## 触らないでほしいもの- `secrets/` 以下のすべてのファイル - `.env` で始まるファイル - `client_drafts/` の中の `*.md`(未公開記事)## チャットに書き出さないでほしい情報- 取引先名(社名) - 個人名(社内メンバー含む) - 金額・契約条件## 動いてほしい範囲- 公開済みの素材を整理する作業はOK - 新規ファイルの作成も、上記ルールを守るならOK「ノンエンジニアにこんなの書ける?」と思うかもしれませんが、CLAUDE.md の作り方自体をClaude Codeに相談すれば、対話で一緒に作ってくれます。最初の1回さえ用意すれば、あとは使い回せるのが便利。設定その4: 困ったときの「いったん止める」を覚えておく 最後に、プライバシー以前に大事な保険として、「ヤバい!と思ったときに止める方法」を体に覚えさせておきます。実行中の処理を中断する: Ctrl + C(もう一度押すとセッションも終了) セッションを完全に終了する: /exit または Ctrl + D どうしても止まらないとき: ターミナルのウィンドウを閉じる 認証を切りたい: 公式の手順に従ってログアウト ファイルが書き換えられたか心配: バックアップ(Time Machineなど)を有効にしておく「止める」「戻す」がいつでもできると分かっているだけで、心理的にかなり余裕が生まれます。私は最初の1週間、毎晩寝る前にTime Machineが回っていることを確認していました。慎重すぎ?と思うかもしれませんが、不安なまま使うより、ちょっとやりすぎなくらい安全策を敷いてから使うほうが、結果的に道具を信頼できるようになります。まとめ:ノンエンジニアのプライバシー・チェックリスト 長くなったので、私が「これだけはやっておこう」と決めたポイントを一覧にまとめます。 Claude.aiのSettings → Privacyで「Help improve Claude」をオフにした 自分のプラン(Free / Pro / Max / Team / Enterpriseなど)でのデータ取り扱いを公式ドキュメントで確認した 機密度の高いフォルダでは、Claude Codeを起動しないルールを決めた 起動するフォルダには CLAUDE.md を置き、触らせたくない範囲を文章で書いた Ctrl + C で止める方法と、ログアウト手順を覚えた Time Machineなどのバックアップを有効にした「何を信頼して、何を信頼しないか」を自分で決められるようになると、AIツールはとたんに頼れる相棒になります。 反対に、ここを曖昧なままにしておくと、便利さに溺れて後で後悔しやすいので、最初に1時間でも投資する価値はあると思います。 次回は、いよいよ攻めに転じます。 Claude Code for VS Code を入れて、地獄と化した私のダウンロードフォルダを救出する 回です。スクショ50枚、ZIP多数、なぜか入っているDMG……あの混沌に、AIで挑みます。 次に読むのがおすすめの記事ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #1 まずはインストール編 ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #3 設定で情報を漏らさない - ダウンロードフォルダ整理編参考文献・出典Anthropic プライバシーポリシー Anthropic 利用規約 Updates to Consumer Terms and Privacy Policy(Anthropic公式・2025年8月) Is my data used for model training?(Anthropic Privacy Center) Claude Code 公式ドキュメント
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Etsuko Mera - 30 Apr, 2026
ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #1 まずはインストール編 - MacBook ProにClaude Codeを入れてみた
はじめに こんにちは、広報・制作担当のmeraです。 普段はブログの執筆や画像制作、SNS運用が主な仕事で、コードを書く機会はほぼゼロ。「ターミナル」と聞くと、無意識に身構えてしまうタイプの人間です。 そんな私が、なぜか今、Claude Code に入門しています。 きっかけは「業務効率化、AIに頼ってもいいんじゃない?」という素朴な気持ち。やさしいAI研究所で日々AIに触れているのに、いちばんパワフルな道具を使わずにいるのは、やっぱりもったいない。 このシリーズでは、ノンエンジニアの私がClaude Codeに触れて転んで起き上がる過程を、リアルタイムで書き残していきます。第1回は「とにかくインストールしてみる編」です。この記事は、コードを書かない仕事をしている人が、はじめてClaude CodeをMacに入れるまでのドキュメンタリーです。完璧な手順書ではなく、「同じところでつまずいた人の気持ちが分かる記録」として読んでもらえたら嬉しいです。この記事で学べることノンエンジニアでもClaude CodeをMacに入れられる、という安心感 MacBook Pro + Claude Pro契約での具体的なインストールの流れ 私が実際につまずいたポイントと、その乗り越え方わたしの環境 まずはスペック紹介から。項目 内容PC MacBook Pro(Apple Silicon)OS macOS(最新版にアップデート済み)Claudeのプラン Claude Pro普段使うアプリ ブラウザ・Figma・VS Code(ちょっとだけ)・各種SNSツールターミナル経験値 ほぼゼロ。cdって何の略?レベルつまり、「Macは触り慣れているけど、開発っぽいことはほぼやらない人」 が、この記事の主人公です。ステップ1: 「ターミナル」を開く決意 最初の関門は、技術ではなく「気持ち」でした。 真っ黒な画面に白い文字。ハリウッドのハッカー映画でしか見たことがないあの画面を、自分のMacでも開く必要がある……はず。 開き方は意外とシンプルで、Launchpad → 「ターミナル」と検索 → 起動。これだけ。 ところが実際に開いてみると、Macの初期設定では白っぽい画面に黒い文字で、名前が表示されているはず。映画のイメージとは違って、ちょっと拍子抜けするくらいフレンドリーな見た目です。怖くない、怖くない。ターミナルは「Macに口頭で命令する場所」だと思うと気が楽になります。マウスでぽちぽちする代わりに、文字で「あれやって」と指示するだけ。失敗してもMacが壊れることはほぼない、と自分に言い聞かせました。ステップ2: Claude Codeを入れる前の下準備 Claude Codeは、Node.js という土台の上で動くツールでした。 「Node.js…なんか聞いたことはある」状態の私は、まずここから。 Anthropicの公式ドキュメントを読みながら、私は以下の方針を選びました。Node.jsを公式インストーラで入れる(最もミスが少なそう) すでに入っているか、ターミナルで node -v と打って確認するnode -v でバージョン番号(例: v20.x.x)が返ってくればOK。返ってこなければ、Node.js公式サイト からLTS版をダウンロードしてインストールします。 # Node.jsが入っているかの確認 node -v# npmが入っているかの確認 npm -vここで一回つまずきました。 私のMacにはなぜか古いNode.jsが入っていて、最新版を入れたつもりがターミナルでは古い方が呼ばれていたのです。再起動したら直りました(よくある)。ステップ3: Claude Codeをインストールする 下準備ができたら、いよいよ本番。 ターミナルにこう打ち込みます。 npm install -g @anthropic-ai/claude-code-g は「グローバルに(=Mac全体で使えるように)入れてね」という合図。 Enterを押すと、文字がだだだっと流れて、しばらく止まります。私はここで「フリーズした!?」と慌てましたが、実は黙々と作業中。コーヒーでも淹れて、待つのが正解でした。 完了したら、確認のために以下を打ちます。 claude --versionバージョン番号が表示されたら、インストール成功です。 このとき、本当に「画面の中で何かが起きている!」という感動があって、自分でも意外なくらいテンションが上がりました。`npm install -g` で「権限がないよ(EACCES)」と怒られる場合があります。私は怒られませんでしたが、もし出たらAnthropicの公式ドキュメントの推奨手順を確認するのが安全です。`sudo` で無理やり通す手もありますが、後でややこしくなりがちなので、まずは公式の指示に従うのがおすすめ。ステップ4: ログインしてClaude Pro契約と紐付ける Claude CodeをClaude Proアカウントで使うために、ログインが必要です。 claudeと打つと、Claude Codeが起動して、認証用のURLがターミナルに表示されました。 そのURLをブラウザで開き、いつもClaudeを使っているアカウントでログインすると、ターミナルの画面に「ログイン成功!」のような表示が出ます。 ここで一瞬不安になったのが、「Pro契約だけど、Claude Codeって本当に追加課金なしで使える?」 という点。 公式の案内をよく読むと、Pro / Max / Team などのプランで対応範囲が異なるので、自分の契約プランで使える範囲はAnthropic公式ドキュメントで確認するのが安心です。ステップ5: 初めての「こんにちは」 ログインできたら、もう動かせます。 試しに、適当なフォルダに移動してClaude Codeを起動してみました。 # テスト用フォルダを作って移動する mkdir ~/claude-test cd ~/claude-test# Claude Codeを起動 claude起動すると、ターミナル上にチャットっぽい画面が出てきます。 私は最初、おそるおそるこのフォルダに、自己紹介を書いた hello.md を作ってください。と打ってみました。 数秒後、hello.md が静かに作られているのを確認。 「私の言葉で、ファイルが生まれた」 ……これは、ちょっと感動的でした。 ノンエンジニアの自分が、ターミナルの中で「ものを作る人」になったような気がして、ちょっと泣きそうでした(言い過ぎ)。つまずきポイントと、私の乗り越え方 正直に書いておくと、ここまでの道のりで私はこんなところで止まりました。「ターミナル」を開くまでの心理的ハードル → コーヒーを淹れて、深呼吸して、開く。それだけ。 Node.jsのバージョンが古いまま使われていた → Macを再起動したら直った。困ったら再起動、はノンエンジニアの最強ツール。 権限エラーが怖くて手が止まった → 出てから対処すればOK、と腹をくくる。出なかった。 Pro契約で本当に使えるのか不安 → 公式ドキュメントを読み、自分のプランで使える範囲を確認する。「全部わかってから始める」のは無理だと割り切ったら、急に進みが早くなりました。まとめ 第1回は、「とにかく入れて、動かすまで」を目標にしました。 振り返ってみると、ノンエンジニアにとっての本当の壁は、技術そのものよりも「ターミナルに自分から話しかけにいく勇気」だった気がします。Claude CodeはMacBook Pro + Pro契約で、ターミナルから入れられる インストール本番は、コマンド1行(npm install -g @anthropic-ai/claude-code) ログインはブラウザ連携でラク 困ったら、再起動とAnthropic公式ドキュメント次回は、嬉しさだけで突き進んだあとに襲ってくる「ちょっと待って、これ、私の作業ファイル、勝手にどこかに送られてない?」という不安と向き合います。プライバシー設定編、お楽しみに。 次に読むのがおすすめの記事ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #2 設定で情報を漏らさない - プライバシー設定編 ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #3 設定で情報を漏らさない - ダウンロードフォルダ整理編参考文献・出典Claude Code 公式ドキュメント (Anthropic) Node.js 公式サイト
意識を測る物差し——統合情報理論(IIT)とグローバルワークスペース理論をやさしく
ここまでの2日間で「AIに意識はあるのか」「自己認識はどこまで可能か」を考えてきました。最終回の今日は、意識そのものを測るための2つの代表的な理論を紹介します。数式は一切使わず、たとえ話でお届けします。 1. 統合情報理論(IIT)——意識は「統合された情報」 イタリアの神経科学者ジュリオ・トノーニが提唱したのが、「統合情報理論(Integrated Information Theory, IIT)」です。 IITの発想は、こんなイメージです。ジグソーパズルを想像してください。バラバラのピースは、それぞれ小さな情報を持っています。ですが、組み上がってひとつの絵になると、「ピースの合計」を超えた意味が生まれます——ここに「統合」が起きるわけです。 IITは、この「情報の統合度(Φ=ファイ)」こそが意識の正体だと考えます。Φが高いほど意識は豊かで、Φがゼロなら意識はない、という物差しです。 この理論で面白いのは、シリコンでも生物でも、統合さえ高ければ意識はあるという結論になる点です。一方、今のAIは「並列に計算して答えを組み合わせる」構造が多く、Φは意外に低いかもしれない、とも指摘されています。 2. グローバルワークスペース理論(GWT)——意識は「脳内の放送局」 もうひとつの有力な理論が、心理学者バーナード・バーズが提唱した「グローバルワークスペース理論(Global Workspace Theory, GWT)」です。 こちらのたとえは、脳内のテレビ放送局です。脳の中ではさまざまな処理が裏でこっそり走っています。目から入った光の分析、記憶の検索、体の動かし方の調整……。そのほとんどは無意識のまま処理されます。 ところが、特別に重要な情報は「中央のスタジオ」に持ち込まれ、脳全体に一斉放送される。この放送こそが「意識にのぼる」ということだ、というのがGWTの考え方です。 面白いことに、近年のAI研究では、複数のモジュールがひとつの共有スペースで情報をやりとりするアーキテクチャが注目されています。GWTの発想を取り入れたAIがすでに作られ始めているのです。 2つの理論が示すもの IITは「内部構造を見て測る」アプローチ、GWTは「情報の流れを見て測る」アプローチ。どちらも一長一短ですが、意識を科学的に議論するための共通の土俵を提供してくれます。 AIに意識があるかどうかを将来判定するなら、こうした物差しを使うことになるかもしれません。そのとき私たちは、AIをどう扱うべきかという、新しい倫理の問題にも向き合うことになります。 シリーズを終えて 3日間のまとめを短く。問い(月)→ 実例(火)→ 物差し(水)と歩いてきました。答えはまだ出ていません。でも、問いを正しく持てるようになることが、やさしいAI時代の第一歩だと私たちは考えています。やさしいAI研究所ブログ|人工意識シリーズ(全3回)第3回・完 人工意識シリーズはこれで完結です。続きの議論を一緒に深めたい方は、毎週土曜日開催のオープンラボへぜひお越しください。やさしいAI研究所の研究活動や最新の取り組みについてはコーポレートサイトからご覧いただけます。