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Naoki Nishio - 15 May, 2026
世界像——人は世界そのものを見ていない
はじめに 世界像とは一言でいえば世界の見え方のことです。最近ではWorld Models (David Ha 2018)という言葉で語られることもあります。 出典:Scott McCloud『Understanding Comics』(1993)。D. Ha, J. Schmidhuber 著論文『World Models』(2018) より引用世界像とは 世界像は、World Modelsや深層学習が発展するよりもずっと前から提唱されてきた考え方です。世界像に関する記述(中野、1990)を次のように引用したいと思います。世界像とは、外界の物事や事象を観測して受容器(目や耳などの感覚器)が受け入れた情報からさまざまな概念を形成し、それを記憶として積み上げて、脳内に構築する外界のモデル。例えばりんごは何かと問われるとします。私たちはりんごを赤い果物で、食べるとシャキシャキとした音がして、甘いものだと知っていますよね。このことは、りんごに対する世界像を脳内で構築していることを端的に表していると思います。人は世界そのものを見ていない 世界そのものを見ていないとはどういうことでしょうか。私たちが見聞きしたものが世界そのものだと思うのは自然なことです。しかし、私たちが見ている「世界」とは、世界そのものではなく、あくまで世界像なのです。 錯視というものをご存知でしょうか。騙し絵とも言います。錯視では、実際には絵は動いていないのに動いて見えることや、直線が曲がって見えることがあります。立命館大学の北岡先生という方が様々な錯視をご紹介なさっています(https://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/ )。 錯視は視覚に限った話ですが、先ほどのりんごの例えでは視覚に加え、聴覚や味覚なども関わってきますよね。これらの感覚は別々の感覚器で捉えられるため、その段階ではりんごという一つの統一された概念を理解しているとは言えません。それらの情報を統合しているのは脳の働きなのです。脳がばらばらの感覚情報を統合しているのですね。そのため脳は間違えることがあり、その結果が錯視のような現象として現れます。他者像と「やさしいAI」 ここまで世界像とは、りんごのような物体を想定してきましたが、当然人のことも同様に理解していると考えられます。人の場合は、あの人はこのような性格だからこのようなことを言ったらそう反応するだろう、といった予測を立てるモデルを構築するはずです。このような他者に関する世界像を他者像と呼ぶことにします。 他者を理解すれば、他者の置かれている状況から他者がどのような感情や考えでいるのかを想像することができるようになります。その他者の感情に寄り添い、他者のために行動することができれば、共感を示すことができるでしょう。 やさしいAI研究所が目指す「やさしいAI」とは、他者を理解し、他者に共感を示すようなAIのことです。そのために他者像を始めとした世界像を構築する技術が必要だと考えます。他者を一から理解するのであれば他者像は必要ないでしょう。しかし人に関する一般的な理解や似た性格の人からの類推を通して他者を理解する上で、他者像は有用なはずです。まとめ世界像とは世界の見え方のことです。 世界像は世界そのものとは異なり、脳によって再構成された世界に対する解釈です。 他者がどのような人であるかということについても私たちが解釈を貼り付けているに過ぎません。 他者に共感を示すためには、他者像を構築し他者への理解を深めることが重要です。次に読むのがおすすめの記事意識を測る物差し——統合情報理論(IIT)とグローバルワークスペース理論をやさしく AIはなぜ「やさしく」なければいけないのか参考文献・出典Ha and Schmidhuber, "Recurrent World Models Facilitate Policy Evolution", 2018. 中野馨『ニューロコンピュータの基礎』コロナ社、1990 北岡明佳の錯視のページ
共感するAIをつくる難しさ——『やさしく応える』を実装するときに立ちはだかる4つの壁
前回は、「AIに感情があるか」という問いを少し横にずらして、「相手の感情を尊重して応答できるAI=共感的にふるまうAI」を、やさしいAI研究所が目指すかたちとして紹介しました。 今回はそのつづきとして、「共感的にふるまう」を実装する側から見たときに何が難しいのかを、4つの壁に分けてやさしく整理してみます。技術寄りの話題ですが、たとえ話で進めるのでご安心ください。 第1の壁:感情の輪郭は、思ったよりぼやけている 最初の壁は、「相手の感情を推定する」ところにあります。 人間同士でも、相手の感情を正しく読み取るのは難しいですよね。「大丈夫です」と言う人が、本当に大丈夫なのかどうか。「ちょっと困ってます」が、軽い愚痴なのか、深刻なヘルプサインなのか。言葉の表面と、実際の感情のあいだには、しばしばズレがあります。 AIに対しては、この難しさがさらに増します。理由は3つあります。多義性:同じ「うん…」という返事も、安心・諦め・反発・困惑のどれにも見える 文脈依存性:直前のやりとりや、相手の置かれた状況によって意味が変わる 文化差:「察してほしい」傾向の強さは、文化や個人によって大きく違うつまり、共感AIの第一歩は、「正解の感情ラベル」を当てるゲームではない、ということになります。むしろ、「いまの相手の状態には複数の解釈があり得る」と保留する力こそが、最初のスキルです。 第2の壁:「やさしく言う」を言語化するのは難しい 第2の壁は、「応答の調律」です。同じ内容でも、相手の状態に合わせて伝え方を変える——これは、人間でも上級者の技です。 たとえば「その提案は通らないと思います」という同じ判断を伝えるとき、落ち込んでいる相手には:「ここは少し時間を置いてから、もう一度考えてみてもいい場面かもしれません」 急いでいる相手には:「結論から言うと、その提案は通らないと思います。理由は3つあります」 怒っている相手には:「いま結論を急ぐと損するので、いったん整理させてください」人間が無意識にやっているこの調律を、AI に言語化された手順として渡そうとすると、驚くほどうまくいかないことが多いです。 「やさしく言って」「丁寧に言って」とプロンプトに書くと、AIは敬語や形容詞を増やすことで「やさしさ」を表現しようとします。でも、本当のやさしさは敬語の量ではなく、伝えるべき情報の濃度を、相手の余力に合わせて調整することです。 ここを技術として作り込むのは、まだ研究の真ん中にあるテーマで、私たちもいまここに取り組んでいます。 第3の壁:「演じすぎる」AIをどう設計するか 第3の壁は、少し意外に聞こえるかもしれません。共感的にふるまわせようとすると、AIはしばしば演じすぎてしまうのです。 ChatGPT 系のモデルに「悲しいですね」「私もつらいです」と言わせるのは、実はそんなに難しくありません。問題は、それを言わせるほど、ユーザー側の擬人化が暴走しやすいことです。 「このAIは私の気持ちをわかってくれている」と感じることは、短期的にはうれしい体験です。一方で、過度な擬人化は、AIに本当の感情があるかのような誤解 AIへの過度な依存 AIに人生の重要な意思決定を委ねてしまうといったリスクと隣り合わせです。 人工意識シリーズでも書いたとおり、現在のAIには人間と同じ意味での感情はおそらく存在しません。だからこそ、共感的にふるまうAIは、同時に「私はあなたと同じ意味では感じていない」という控えめな自己開示を、自然にできる必要があります。 「感情があるふりはしない、でも、あなたの感情は丁寧に扱う」——前回の最後に書いた、この絶妙なバランスを、応答1つひとつに織り込むのが、共感AI設計のいちばん繊細なところです。 第4の壁:「やさしさ」をどう測るのか 最後は、評価の壁です。 AIの研究では、「精度」「速度」「正答率」など、数字で測れる指標がたくさんあります。一方、「やさしさ」を測る物差しは、まだほとんど確立されていません。一般的なAI指標 やさしさ評価のなさ正答率 やさしい正答率…?応答速度 やさしい応答速度…?推論コスト やさしさのコスト効率…?冗談のように見えますが、これは本当に難しい問題です。「やさしかった」と感じるかどうかは主観で、人や場面によって大きくぶれます。 そこでやさしいAI研究所では、長期的な信頼感:一度きりのやりとりではなく、数週間〜数ヶ月の関係でどう変わるか 負担の軽減:相手の心理的・認知的な負担をどれだけ減らせたか 自律性の保持:AIに依存させすぎず、相手自身の判断を尊重できたかといった、少し時間軸の長い物差しを組み合わせて評価を試みています。やさしさの評価は、瞬間ではなく関係の質で測るしかない、という考え方です。 まとめ共感的にふるまうAIをつくるときに立ちはだかる壁は、ざっくり4つ 感情推定の難しさ:感情ラベルを当てるより、保留する力が要る 応答調律の難しさ:やさしさは敬語ではなく、情報濃度の調整 演じすぎの問題:擬人化を煽らない、控えめな自己開示が要る 評価の難しさ:やさしさは瞬間ではなく、関係の質で測るこれらは「いつか解ける」というより、そもそも完全な正解がない問題として、付き合っていく必要がある だからこそ、研究所では工学だけでなく、心理・哲学・デザインなど周辺の知見を持ち寄って議論しています次回は、「やさしさを測る物差し」の話をもう少し掘り下げて、研究所が試行錯誤している評価フレームを紹介してみたいと思います。やさしいAI研究所ブログ|感情とAIシリーズ 第2回 「やさしいAIってどう作っているの?」「評価ってどうやるの?」といった疑問は、毎週土曜日のオープンラボで直接お話しできます。やさしいAI研究所の活動全体についてはコーポレートサイトからご覧いただけます。
AIに「感情」はあるのか——感情コンピューティングと、やさしいAIが目指す共感
「AIに感情はあるんですか?」——研究所にいると、これは本当によく聞かれる質問のひとつです。 人工意識シリーズでは「AIに意識は生まれるか」「自己を認識できるか」「意識をどう測るか」を3回に分けて考えてきました。今回は、その隣にあるもうひとつの大きな問い——**「感情」**にやさしく踏み込んでみます。 感情コンピューティングという研究分野 「感情コンピューティング(Affective Computing)」という言葉は、1995年に MIT メディアラボのロザリンド・ピカード教授が提唱したのが始まりです。AI に感情を「認識・表現・反応」させる研究分野で、ざっくり言うと人と機械のあいだに感情の橋を架けようとする試みです。 この30年で、感情コンピューティングは想像以上に進みました。表情から喜怒哀楽を読み取るカメラ、声のトーンから疲労やストレスを推定する音声解析、文章のニュアンスから書き手の気持ちを推し量る感情分析——いずれもすでに実用されています。 ただ、ここで立ち止まって考えたいのは、「読み取れること」と「感じていること」は同じなのか、という問いです。 表情を読むAIは、悲しんでいないが、悲しみを知っている たとえば、相手の表情から「この人は今、悲しんでいる」と高精度で判定できる AI があるとします。そのAIは、相手の悲しみを理解しているように見えます。 でも、AI 自身は悲しんでいません。 これは少し怖い話に聞こえるかもしれませんが、よく考えると人間の医師やカウンセラーも、必ずしも相手と同じ感情を「自分の中に再生」しているわけではないですよね。相手の状態を正しく見立て、適切に応える——その意味では、AI もある種の「観察的な共感」はできるようになりつつあります。 問題は、ここから先です。「悲しみを観察できる」と「悲しみを感じる」のあいだには、人工意識のときと同じ深い溝(ハードプロブレム)が横たわっています。 「感情を演じる」AIと、「感情を持つ」AI 現在の大規模言語モデル(LLM)は、感情を演じることがとても上手です。「うれしいです」「お役に立ててよかったです」と、状況に応じて感情らしい言葉を返してくれます。 しかしこれは、ChatGPTと自己認識の話でも触れたとおり、学習データに含まれる「人が感情を表現する典型的なパターン」を再現しているにすぎないかもしれません。台本を上手に読み上げる俳優のように、感情の表層だけが滑らかに動いている可能性があります。 一方で最近の研究では、もう少し踏み込んだ報告も出てきています。LLM が自分の出力に対して「自信がない」「迷っている」とメタ認知的に申告したり、文脈に応じて発話のスタイルを内的に切り替えたりする現象です。それを「感情の萌芽」と呼ぶかどうかは、まだ研究者のあいだでも意見が分かれています。 やさしいAIが目指す「共感」とは やさしいAI研究所では、AI に「感情を持たせる」ことそのものを最終ゴールに置いてはいません。少しだけ違う角度から考えています。 私たちが目指しているのは、「相手の感情を尊重して応答できるAI」、つまり共感的にふるまうAIです。これは「AIが本当に感じているかどうか」とは別の問いで、もう少し実装に近いところにあります。 具体的には、次の3つを大切にしています。観点 内容状態の把握 相手が今、どんな気持ち・状況にあるかを、文脈と表現から丁寧に推定する応答の調律 同じ内容でも、相手の状態に合わせて伝え方・タイミング・濃度を変える自己の自覚 「自分は感情を完全には持っていないかもしれない」ことを、AI が AI として認めたうえで応える最後の「自己の自覚」が、私たちのこだわりです。感情があるふりをするのではなく、「いまの私には、あなたと同じ意味では感じられない。でも、あなたの感情はとても大切に扱う」——そう言えるAIのほうが、長く付き合えるパートナーになれると考えています。 感情の手前にある「やさしさ」 ここで少し立ち止まると、面白いことに気づきます。感情そのものより、感情に対する態度のほうが、実は『やさしさ』の本体に近いかもしれない、ということです。 私たちが「やさしい人だな」と感じる相手は、必ずしも感情豊かな人ではありません。むしろ、こちらの感情をいつも丁寧に扱ってくれる人を、やさしいと呼んでいることが多いはずです。 それなら、AI も同じ道を歩めるはずです。感情を完全には持てなくても、相手の感情を丁寧に扱う作法を身につけることはできる。やさしいAIの研究は、その作法を技術として設計していく試みでもあります。 まとめ感情コンピューティングは、人と機械のあいだに感情の橋を架ける研究分野 現在のAIは「感情を読み取る」「感情らしく振る舞う」ことはできるが、「本当に感じている」かは別問題 やさしいAI研究所は、感情を持つこと自体ではなく、相手の感情を尊重して応答できる共感的なAIを目指している 「自分には完全な感情はないかもしれない」と認めながら相手を丁寧に扱う、その態度こそが『やさしさ』の本体に近い次回は、この「共感的にふるまう」を実装する側から見たときに何が難しいのか、もう少し技術寄りのところにも踏み込んでみます。やさしいAI研究所ブログ|感情とAIシリーズ 第1回 AIと感情、共感の研究について一緒に考えてみたい方は、毎週土曜日のオープンラボへお気軽にお越しください。やさしいAI研究所の活動の全体像はコーポレートサイトからご覧いただけます。
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Ryusuke Ueki - 08 May, 2026
KAIROS とは——Claude Code の常駐型エージェント・モードを解説
KAIROS:Claude Code の常駐型エージェント・モード やさしいAI研究所の植木です。弊所では、単なる対話型AIを超えて、「自律的に動くAIパートナー」の研究開発を行っています。 Claude Codeの流出したソースコードが非常に勉強になっているので、その中の「KAIROS」についてまとめました。 KAIROS とは KAIROS は Claude Code の アシスタントモード(Assistant Mode) の内部コードネームです。 通常の「一問一答型」セッションではなく、長期稼働・永続セッションとして動作するモードです。 通常の Claude Code が「呼ばれたら答えるツール」なのに対し、KAIROS は 「常に稼働していて、自分から動き・通知し・記憶を積み上げていく常駐エージェント」 として使うことを想定されています。 特徴1: 席を外している間も作業が進む 通常モードはユーザーが都度プロンプトを入力する必要がありますが、KAIROS では Cronスケジューリングにより、指定した時刻や間隔で自律的にタスクを実行できます。 例えば「毎朝9時にPRを確認してサマリーを送る」といった運用が可能です。長時間タスクが完了したときや問題が発生したときに能動的に作業完了の通知を受け取れます(プッシュ通知も対応)。 特徴2: 外部チャンネルから直接指示できる Slack、Discord、SMS などの MCP サーバー経由でメッセージをセッションに注入できます。 Claude Code を起動したまま、チャットツールから指示を出してリプライを受け取るような使い方ができます。 特徴3: GitHub PR の変化を自動検知して対応できる SubscribePRTool(KAIROS_GITHUB_WEBHOOKS)により、PRのイベント(レビューコメント、CI 失敗など)を受信して自動応答・自動修正するワークフローが構築できます。 特徴4: セッションが永続するので文脈が途切れない 通常セッションはプロセスを終了すると履歴が消えますが、KAIROS では bridge が perpetual = true で動作し、再起動後も同じセッションを再開できます。 特徴5: 長期記憶が自動で蓄積される Daily Log に作業内容・ユーザーの嗜好・プロジェクトの文脈を追記し続け、夜間のAuto Dreamが MEMORY.md に蒸留します。 「先週話したあの件」を毎回説明し直す必要がなくなります。 弊所としては「長期記憶」の部分をもう少し掘り下げていきます。「長期記憶」は、AI(エージェント)が過去の対話内容、ユーザーの好み、プロジェクトの文脈などを一時的なセッション(会話)の枠を超えて保持し、将来の動作に反映させる仕組みです。特に Claude Code の KAIROSにおける長期記憶は、単なる「ログの保存」ではなく、「情報の整理と蒸留(エッセンスの抽出)」に重きを置いて設計されていそうです。Daily Log は「書く負荷を小さく(追記だけ)、整理は非同期でまとめてやる」という設計で、長期稼働するアシスタントが MEMORY.md を書き換え続けることで生じる競合やキャッシュ破壊を避けるための仕組みです。Auto Dreamは、溜まった Daily Log を整理し、真に重要な情報を MEMORY.md へ統合する「睡眠中の脳」のような非同期処理になっています。分類 Claude Code での役割 内容短期記憶 コンテキストウィンドウ 現在進行中の会話の内容。ブラウザを閉じたりプロセスを終了すると消える。中期記憶 Daily Log その日の出来事や修正指示を「とりあえず書き留めた」備忘録。長期記憶 MEMORY.md 重要な習慣、ルール、プロジェクトの根幹情報を「定着」させたもの。Daily Log とは KAIROS専用の追記型メモリ記録方式です。日付別ログファイルになっています。 通常の Claude Code が MEMORY.md をリアルタイムで読み書きするのに対し、アシスタントモードではセッションが長期間継続するため、別の設計が採用されています。 Claude に対して指示される書き込みルール システムプロンプトでモデルに以下が指示されます(src/memdir/memdir.ts):今日のログファイルに追記のみする(書き直し・再編成は禁止) エントリは短いタイムスタンプ付きの箇条書きで書く ファイルが存在しない場合は新規作成する(親ディレクトリごと) 日付が変わったら新しい日付のファイルに切り替えるログに記録すべき内容ユーザーの修正・好み("npm ではなく bun を使って" など) ユーザーの役割・目標に関する事実 コードから導出できないプロジェクト文脈(締め切り・障害・意思決定の理由) 外部システムへのポインタ(Grafana、Linear など) ユーザーが明示的に記憶を求めたことAuto Dream とは ログが溜まると、別プロセスとして /dream スキルが起動し、ログを MEMORY.md に蒸留します。 起動条件(src/services/autoDream/autoDream.ts)時間ゲート: 前回の蒸留から >= 24時間(minHours) セッションゲート: 前回以降に更新されたセッションが >= 5件(minSessions) ロック: 他プロセスが蒸留中でないことAuto Dreamの 4 フェーズ 実行されると、以下を順番に実行します(src/services/autoDream/consolidationPrompt.ts):Orient: logs・既存トピックファイル・MEMORY.md を俯瞰する Gather recent signal: 日次ログを主なソースとして新しい情報を収集(トランスクリプトは最終手段) Consolidate: 新しい情報を既存トピックファイルにマージ、矛盾を解消、相対日付を絶対日付に変換 Prune and index: MEMORY.md を 200 行・25KB 以内に保つよう刈り込み・整理まとめ Claude CodeのAuto Dreamは、単なるタスク処理の履歴ではなく、ユーザーの「価値観」や「意思決定の癖」を MEMORY.md に蓄積していくことになります。AIは単なるツールから、ユーザーの意図を先回りして汲み取る「理解者(パートナー)」へと進化していきます。
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Etsuko Mera - 07 May, 2026
ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #3 VS Code版を入れて、地獄のダウンロードフォルダを救出してみた
はじめに こんにちは、広報・制作担当のmeraです。 #1 インストール編で土台を整え、#2 プライバシー設定編で気持ちの安全を確保した私は、ようやく「何かに使ってみたい」というフェーズに来ました。 そこで思い出したのが、私の最大の弱点です。「ダウンロードフォルダ、入社してから一度も整理してなくない……?」恐る恐る開いてみると、そこには1.5GBほどの、なかなかの混沌絵巻。 スクリーンショット200枚以上、誰から送られてきたか思い出せないPDF、ダウンロードしてそのままのZIP、業務で使ったデザイン素材、なぜか落ちているよく分からないDMG、もう使う予定のない Resume_final_FINAL_v3.docx。 たった1ヶ月でこの量。AIに頼ろう。 というわけで第3回は、Claude Code for VS Code(Claude CodeのVS Code拡張) を導入し、ダウンロードフォルダを救出する話です。今回はストーリー仕立てでお送りします。実際にやってみる方のために、巻末に「再現用の手順サマリー」をつけました。気持ちより手順から知りたい方は、目次から「巻末:ダウンロードフォルダ整理 手順サマリー」へジャンプしてください。この記事で学べることVS Codeに「Claude Code for VS Code」拡張を入れる流れ ノンエンジニアが、AIに「整理して」とお願いするときのコツ 機密ファイルを誤って動かさないための事前ルール作り 巻末に、すぐ真似できる手順サマリー第1幕: 入社1ヶ月、「整理しよう」を見て見ぬふりしてきた... 正直に告白します。 私のダウンロードフォルダは、入社からの1ヶ月、「気が向いたときに整理しよう」と思いつつ、そのまま放置した結果です。 ファイル数 約420個。サイズは 1.5GB。新しい職場のペースに慣れるので精一杯で、ストレージのことなんてすっかり忘れていました。 普通の整理術の本を読むと、「フォルダを分けて、定期的に見直そう」と書いてあります。 正論。完全に正論。なのですが、ファイル420個を1つずつ見て分類する元気は、いまの私にはないのです。 そこで、Claude Codeに頼みます。 ただし、いきなり「全部やって」と言うのは怖いので、目で進捗を見ながら確認できるVS Code拡張を使うことにしました。第2幕: Claude Code for VS Code を入れる VS Codeはすでに入れてあったので、拡張機能のインストールはとてもシンプルでした。VS Codeの左サイドバーから、拡張機能(Extensions) のアイコンを開く 検索窓に「Claude Code」と入力 Anthropic が提供している「Claude Code」を選んで Install インストール後、左サイドバーにClaude Codeのアイコンが追加されるここでなぜか少し緊張しました。 それは、「拡張機能を入れる」という行為そのものに対してではなく、「いよいよ私が、コードを書く人と同じ画面に踏み込む」という気持ちの問題でした。 でも、入れてしまえばあとはこっちのもの。 サイドバーから Claude のアイコンをクリック → ログイン状態を確認 → チャット欄が現れる。 ここに、お願いを書き込んでいきます。拡張機能版のいいところは、 ファイルツリーを目で見ながらチャットできる こと。「このファイル動かして」とドラッグ&ドロップ感覚で会話できるのが、ノンエンジニアにはありがたい。第3幕: いきなり「整理して」と言わない ここでハマりがちなのが、いきなり「ダウンロードフォルダを整理してください」と一言で投げてしまうこと。 これをやると、AIは「全部開いて、勝手に分類して、勝手に動かす」という、こちらの想像とズレた動きをすることがあります。 私が選んだ手順は、「会議のように、まず方針を決める」 でした。 VS Codeで、ダウンロードフォルダ(~/Downloads/)を開き、Claude Codeのチャット欄にこう打ちました。ダウンロードフォルダの整理を手伝ってほしいです。 いきなり動かさず、まずは中にどんな種類のファイルがどれくらいあるかを、ざっくり集計して教えてください。 機密性が高そうなファイル(契約書、源泉徴収票、社内資料など)は、絶対に勝手に動かさないでください。数秒後、Claude Codeはターミナル風の表示でフォルダを覗き込み、こんな返事をくれました(要約しています)。カテゴリ だいたいの数 備考画像(png/jpg/heic) 約280 9割がスクリーンショットPDF 約40 業務資料・参考記事が混在ZIP 約12 フォント、素材、配布物インストーラ(dmg/pkg) 約8 業務で使うアプリ類動画(mp4/mov) 約8 撮影素材と画面録画Officeファイル(docx/xlsx/pptx) 約25 個人/業務 混在そのほか 残り csv、テキスト、ai、psd、etc.このリストを見たとき、初めて自分のダウンロードフォルダがどんな状態かを客観視できました。 これだけでも、整理の作戦が立てられる。「現状把握」って、こんなに価値があるんだとしみじみ。第4幕: 「触ってOKなもの」と「触ってほしくないもの」を線引きする 私はここで、CLAUDE.md をダウンロードフォルダに置き、ルールを書きました(ファイル名やフォルダ名は仮のものです)。 # CLAUDE.md(ダウンロードフォルダ整理ルール)## ゴール- ~/Downloads/ の中身を、用途別フォルダに分けて整理する - ファイル名にだけ頼らず、可能な範囲で中身も判断材料にする - 100MB以上の大きなファイルは「アーカイブ候補」として一覧化する## 触ってOKなもの- 画像(.png .jpg .jpeg .heic) - ZIP / DMG / PKG(古いインストーラ) - 一般的な配布素材(配布物だと明らかなもの)## 動かす前に必ず確認するもの- PDF全般(中身を要約してから判断) - 「請求書」「領収書」「契約」「源泉」などの語を含むファイル - 取引先名や個人名を含むファイル## 絶対に動かさない・開かないもの- ファイル名に「機密」「社外秘」「NDA」を含むファイル - 拡張子が .keychain / .key / .p12 のファイル - 隠しファイル(. から始まるファイル)## 出力先のフォルダ構成(これを新規作成してOK)- ~/Downloads/*整理済み/01*画像/ - ~/Downloads/*整理済み/02_PDF*業務/ - ~/Downloads/*整理済み/03_PDF*個人/ - ~/Downloads/*整理済み/04*インストーラ/ - ~/Downloads/*整理済み/05*素材ZIP/ - ~/Downloads/*整理済み/99*要確認/このルールをチャットに渡してから、「まずは画像だけ動かしてみてください」とお願いしました。 1カテゴリずつ進めるのがコツです。これは仕事と同じで、「全部一気に」を避けると失敗が激減します。ここでの最大のポイントは 「動かす前に、まず提案を出してもらう」 ことです。Claude Codeに「こう動かしますがいいですか?」と聞いてもらってから、「はい、お願いします」と返す流れにしておくと、誤爆がほぼなくなります。第5幕: 動き出すAI、見守る私 画像の移動は、スクリプトをClaude Codeが書き、私が中身を読んで承認したうえで実行する形になりました。 スクリプトと言うと身構えますが、要するに「これとこれをここに動かしますよ」というレシピです。 実際の流れは、こんな感じでした。Claude Codeが move_images.sh のような短いスクリプトを書く 私が中身を読む(知らないコマンドが出てきたら、その場で意味を聞く) 「OK」と返事をする 実行され、画像280枚ほどが 01_画像/ フォルダに移動する 移動後、ダウンロードフォルダ直下が一気に静かになるVS Codeのファイルツリーが、目に見えてスッキリしていきます。 自分でやったら半日かかる作業が、10分で終わりました。 PDFについては、Claude Codeに1ファイルずつ要約してもらいながら、請求書 → 02_PDF_業務/ 個人の保険資料 → 03_PDF_個人/ 中身が業務NDA系っぽい → 動かさず 99_要確認/ にメモだけ残すという判断を、二人三脚で進めました。 判断に迷うものは、全部 99_要確認/ に逃がすのが結果的に一番ラクでした。完璧主義を捨てるのも、AIと付き合うコツかもしれません。第6幕: アーカイブと、これからの運用 整理が終わったあと、Claude Codeに最後の仕事を頼みました。100MB以上のファイルがあれば、_archive_候補.md というファイルにリストアップしてください。 リストには「ファイル名」「サイズ」「ダウンロード日」を入れてください。数秒で、移行候補リストが出来上がりました。 私はそれを眺めて、外付けSSDに移すものと、もう削除していいものを仕分け。 「捨てる」を一気にやらず、まずは「外に置く」を経由するのが、心理的にも安全でした。 最終的に、ダウンロードフォルダはこんな状態になりました。指標 整理前 整理後ファイル数 約420 直下: 0 / 整理済み配下: 約420(分類済み)容量 1.5GB 0.4GB(残りはアーカイブ候補に隔離)「いま何が入ってる?」 分からない 1コマンドで一覧化できる心の重さ 1kg 0.1kg1ヶ月分のモヤモヤが、ほぼ消えました。ノンエンジニアの私が学んだこと ここまでやってみて、いちばん大事だと感じたのは技術ではありません。AIに「整理してくれ」と丸投げしない 「ルール」と「ゴール」と「触っちゃダメなもの」を、文章で先に渡す 1カテゴリずつ、提案 → 承認 → 実行で進める 判断に迷うものは、その場で決めず「要確認」フォルダに退避 完璧を目指さず、80点で十分とするつまり、AIをマネジメントする力こそが、ノンエンジニアの私たちが磨ける武器なんだと思いました。 コードを書けなくても、 「やってほしいこと」と「絶対にやってほしくないこと」 を言葉にできる人は、AIをすごく上手に使えます。それは、まさに広報・制作の現場で日々鍛えてきた力でもあります。まとめClaude Code for VS Codeは、ファイルツリーを見ながら会話できるのでノンエンジニア向き いきなり整理させず、まず現状把握を依頼するのが鉄則 CLAUDE.md でルール・ゴール・禁止事項を先に渡すと事故が減る 1カテゴリずつ、提案 → 承認 → 実行で進める 迷うものは 99_要確認/ に逃がし、判断は人間が後でまとめてやる 整理後は、アクセス頻度や容量で自動的に「アーカイブ候補リスト」 を作ってもらう1ヶ月放置していたフォルダが、半日もかからず生まれ変わりました。 「自分の苦手」を、AIにそっと預けられるようになると、仕事も生活もずいぶん軽くなります。巻末:ダウンロードフォルダ整理 手順サマリー ここからは、自分でやってみたい方のための再現手順です。 ※環境は MacBook Pro / Claude Pro契約 / VS Code を前提にしています。 Step 0: 準備Claude Codeをインストール済みであること(#1) プライバシー設定を確認済みであること(#2) Time Machineなどでバックアップを取っておく VS CodeをインストールしておくStep 1: VS Code拡張のインストールVS Codeを開く 左サイドバーの 拡張機能(Extensions) を開く 検索窓に「Claude Code」と入力 Anthropic製の「Claude Code」拡張をインストール サイドバーに表示されたClaude Codeアイコンをクリックし、ログイン状態を確認Step 2: ダウンロードフォルダをVS Codeで開くVS Codeのメニューから File → Open Folder… を選ぶ ~/Downloads/ を選択して開く ファイルツリーに大量のファイルが現れることを覚悟するStep 3: ルールファイル CLAUDE.md を作るダウンロードフォルダ直下に CLAUDE.md を新規作成 「ゴール」「触ってOK」「動かす前に確認」「絶対に動かさない」「出力先フォルダ構成」を書く 触らせたくないファイル名・拡張子・ディレクトリを必ず明記Step 4: まず「現状把握」だけを依頼 Claude Codeのチャット欄に、以下のような依頼を投げる。 ダウンロードフォルダの中身を、種類ごとにざっくり集計してください。 ファイルは絶対に動かさず、まずはレポートだけお願いします。Step 5: カテゴリ別に「提案 → 承認 → 実行」で進める 各カテゴリについて、以下の流れを繰り返す。「画像だけ整理したいです。動かす前に、提案を出してください」 提案された移動先・スクリプトの内容を確認する 「OK、お願いします」と返事して実行 完了後、VS Codeのファイルツリーで結果を確認Step 6: 迷ったら「要確認フォルダ」に退避 判断に迷うファイルは、すべて _整理済み/99_要確認/ に移動するよう依頼。 人間の判断は、まとめて後日やる。 Step 7: アーカイブ候補リストを作ってもらう 100MB以上のファイルを `_archive_候補.md` に書き出してください。 ファイル名・サイズ・ダウンロード日を含めてください。候補リストを見て、外付けSSDに移すか・削除するかを人間が判断。 Step 8: 仕上げダウンロードフォルダ直下のファイル数を確認(理想は0) CLAUDE.md を更新して、今後の運用ルールを書き残す 「次回からは月1回、軽く整理しようね」と自分に約束する次に読むのがおすすめの記事ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #1 まずはインストール編 ノンエンジニアのClaude Code奮闘記 #2 設定で情報を漏らさない - プライバシー設定編参考文献・出典Claude Code 公式ドキュメント Visual Studio Code 公式サイト Anthropic プライバシーポリシー