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能動的推論

能動的推論について説明します。

能動的推論とは

  • 不確実な外部環境と相互作用しながらエージェントが知覚、学習、行動の意思決定を推論することをモデル化した数学的フレームワーク
  • エージェントは、受動的に環境から感覚情報を受け取り、それを知覚し、推論するのではなく、自身にとって望ましい感覚情報を得るための行動をとる。
  • この理論は、脳が「予測モデル」を構築し、これを使って感覚データを解釈し、適応的な行動を選択するプロセスを中心にしている。

予測コーディング (Predictive Coding)

  • 能動的推論では、脳が環境から得られる感覚情報を単に受動的に処理するのではなく、内部モデル(予測モデル)を使って感覚入力を予測していると考える。
  • この予測と実際の感覚データとの「誤差(予測誤差)」が生じた場合、脳は次の2つの方法で対応
    1. 内部モデルを更新する(学習)。
    2. 自分の行動を変えて、予測を一致させる。

自由エネルギーの最小化

  • 能動的推論は、「自由エネルギー原理(Free Energy Principle)」に基づいている。
  • 自由エネルギー原理とは?
    • 一般的に、「自由エネルギー」とは、ヘルムホルツが考えた熱力学の概念で、システムの内部エネルギーから絶対温度とエントロピーの積を引いた量であり、仕事として外部に自由に取り出せるエネルギーを意味する。
    • 自由エネルギー原理の「自由エネルギー」は、変分自由エネルギーと呼ばれる量であり、ベイズ推論の計算方法によるもの
      • 知覚機能と直接的に関係するダイバージェンス項と、知覚とは直接関係しないシャノンサプライズ項の2つの和
      • 選択し得る知覚のうち、観測された対象と知覚候補の誤差が小さいほど、小さくなる指標
      • 既定のモデルより変化が小さいほど、小さくなる指標
    • この原理によれば、生物は自分の環境における不確実性(自由エネルギー)を最小化しようとしている。生物は、不確実性を減らすために、行動や知覚が調整される。

知覚と行動の統合

  • 能動的推論では、知覚と行動が一体化したプロセスとして捉えられる。
    • 知覚(Perception): 外界の状態を推論し、予測を更新するプロセス。
    • 行動(Action): 環境との相互作用を通じて、自分の予測を現実と一致させるプロセス。
  • 例えば、寒さを感じた場合、人は「暖かい環境に行く」か「服を着る」という行動を選択し、環境や身体状態を自分の予測(快適な温度)に近づける。
  • 能動的推論の理論には、行動の時系列つまり行動決定を扱う理論も含まれており、そこでは「期待自由エネルギー」と呼ばれる未来の不確実性を含んだ量も計算される。
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