本の紹介
- 意識はなぜ生まれたのか~その起源から人工意識まで~
- マイケル・グラツィアーノ著、鈴木光太郎訳
- 白揚社
大脳皮質の進化
- 顕在的注意は、感覚器官で何かをつかむことである。動物は、感覚器官の発達により、自分自身と環境の情報を集め、それらを統合して適切な行動を取る能力を獲得した。これが、自己認識や他者とのコミュニケーションといった意識の基礎となった。
- 潜在的注意は、大脳皮質の大規模な計算装置で何かをつかむことである。進化の過程で、環境適応のための情報処理能力が向上し、意識が生まれた。
- このように、大脳皮質の進化は、外の世界を処理するための新たなアプローチを可能にした。視線を向けなくても、何かに注意を向けることができる。しばしばスポットライトに例えられてきた。スポットライトの中心の明るい部分には、一つか少数の対象だけがあり、それ以外は広く暗い周縁部にある。
大脳皮質と意識
- 大脳皮質は、「潜在的注意」を用いて注意をしている。
- その注意を制御するには、脳は注意についての内的モデルを持っている。
- 詳細で正確過ぎる内的モデルが良くても無駄でしかなく、悪くするとそのプロセスにとって有害である。そのため、この内的モデルは、メカニカルな詳細を欠いている。注意スキーマは、自己を、無定形で非物質的な内的な力、知る能力、体験する能力、反応する能力、移ろう心の焦点を持つ者、基盤となる詳細を欠いた潜在的注意のエッセンスをもつ者、として描く。
注意スキーマとは
- 注意スキーマとは、注意をモニターする一連の情報、いわゆる内的モデルのことを指す。
- 脳は、内的モデルである「身体スキーマ」である身体の構造と変化し続ける身体状態についての一連の情報を借りて、身体の動きを制御している。
- 注意は、制御できなければ意味がないし、内的モデルをもたなければ制御はできない。
- 動物は、自分の世界に存在する個々の対象に注意を向けるだけでなく、ある意味では、自分がそうしていることも知っている。自分の注意についての情報(内的モデル)を持っている。
意識をもつ機械
マイケル・グラツィアーノ氏は、意識をもつ機械を作り出すことは可能だと言っており、そのための条件として、以下の4つを挙げている。注意スキーマは、小さな追加のように見えるが、これが追加されて初めて、機械は主観的体験を主張するための情報をもつと主張する。
1. 人工注意
- ひとつの対象にそのリソースを集中させて深く処理し、その焦点を対象から対象へと切り替える能力。注意を向ける能力が必要である。
2. 注意スキーマ
- 注意をおおまかに記述する内的モデルで、それにより主観的体験がどのようなものかを機械に教える。その内的モデルを持つ必要がある。
3. 適切な範囲
- 視覚的意識だけなど、適切な範囲内の内容をもつ必要がある。
4. 高度な検索エンジン
- 自らの内的モデルにアクセス可能で、それについて語ることができる検索エンジンを持つ必要がある。