情動の発達
- 人間では、情動の発達は、幼少期から成人期にかけて段階的に発達していく。
- 情動の発達には、情動の理解、調整、表現、共感など、多くの側面が含まれ、これらはそれぞれの発達段階で異なる形で現れる。
- 基本的情動の表出から始まり、複雑な情動の理解と調整へと進化していく。情動の調整能力や他者の感情理解は、家庭や学校、友人関係などの社会的な経験を通じて発展する。さらに、遺伝的要因や文化的背景、家庭環境も大きく影響を与える。
分離情動理論(descrete emotion theory)
- イザード(Izard, C.E.)らが提唱する進化論的立場
- 赤ちゃんの表情は情動の表れであり、興味、喜び/幸せ、悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖という基本情動(分離情動)は、文化を超えて普遍的であること
- これらの情動は生得的に分化しており、情動それ自体は発達するものではない。
- 他の立場からの批判が多く、反証する知見も得られている。
分化理論(differential theory)
- ルイス(Lewis, M.)とスルーフ(Sroufe, L.A.)
- 情動は誕生時には分化しておらず、乳児期の早いうちに情動表出にまとまりが生じてくる。
ルイスの情動発達モデル
- 1歳までの情動の出現には、認知的なプロセスが重要な役割を果たしており、原初的情動と呼んだ。
- ダーウィンが人間の種に個有なものとした自己意識的情動は、3歳までに現れるとした。
誕生時
- 両極的な2つの情動(苦痛と快)が現れる。
生後3ヵ月頃まで
- 「喜び」、「悲しみ」、「嫌悪」が現れる。
- 喜び: 人の顔を見た時などに笑顔や興奮、幸せなど
- 悲しみ: 母親が赤ちゃんに関わるのを止めた時など
- 嫌悪: 口の中にある不快な味のものを吐き出したりした時など
生後4~6ヵ月頃まで
- 「怒り」、「驚き」が現れる。
- 怒り: 赤ちゃんの手や腕が制止され、動くことができなかった時など
- 驚き: 子どもだと認識しえいた人が極端に背の低い大人だとわかった時など
生後7ヵ月頃まで
- 「恐れ」が現れる。
- 見知らぬ人に恐れを抱く時など
1歳の後半
- 新たな認知的能力、自己意識的情動(照れ、共感、羨望)
2歳半~3歳頃
- 親や先生から認められたりほめられたりするといった外的基準と、子供自身の内的基準に自分の行動が反しているかどうか評価するようになる。
- 自己意識的情動(誇り、恥、罪悪感)
参考文献
「動機づけと情動」 今田純雄・北口勝也 培風館