情動の機能
人間が情動を持つ理由は何なのか?情動は、人間の生存や社会的な行動において非常に重要な役割を果たしていると言われている。
適応機能
- ダーウィンによれば、環境の変化に対処するための重要なメカニズム
- 危険を察知した際に「恐怖」を感じることで、逃げる・戦うなどの行動を促し、即座に行動を取る必要がある状況で役立つ。例えば、蛇を見たときに恐怖を感じることで、その場から逃げる行動を取るなど。
- 危険やチャンスに迅速に反応することにより、生存の可能性が高まることで、進化的な役割を果たしてきた。
社会的機能
- 自己の感情状態を他者に伝え、あるいは、他者の感情状態が自己に伝えられ、それにより、自己と他者との社会的交互作用が生み出され、人間関係をより親密にさせる。
- 表情や声のトーン、態度を通じて、自分の感情状態を他者に伝えることができ、他者とのコミュニケーションや関係の構築をする。例えば、笑顔を見せることで、他者に友好的な意図を示すことができる。このような感情の表出は、信頼や共感を生み出し、社会的なつながりを深める。
その他
動機づけ
- ポジティブな情動は、目標に向かって進むエネルギーを高め、ネガティブな情動は行動の方向性を変えるきっかけ
- 例えば、恋愛感情は相手と接触したいという行動の動機となる。その一方、ストレスや怒りなどのネガティブな感情は、行動を調整し、問題を解決するためのきっかけになる。
認知機能の調整
- 強い感情を伴う出来事は記憶に残りやすくなるなど、注意や記憶、学習などの認知機能に影響を与える
- 例えば、事故に遭ったときの恐怖体験は、長く記憶に残り、その後の行動に影響を与える。その一方、楽しい経験は学習のモチベーションを高め、逆に不安やストレスは認知パフォーマンスを低下させることがある。
身体的な調整
- 恐怖や怒りの情動は、心拍数を上げたり、アドレナリンの分泌を促したりして、身体を「戦うか逃げるか」の状態に備えさせる
- 例えば、緊張すると手に汗をかいたり、心拍数が上がる。情動は身体の内部状態を調整し、外部環境に対応できるようにすることで、ホメオスタシス(恒常性)の維持に寄与する。
意思決定の調整
- ポジティブな感情やネガティブな感情は、それぞれ異なる選択肢を取る際の基準として働き、意思決定プロセスにも大きな影響を与える
- 例えば、楽しい経験をした場所に再び行きたいと思うのは、ポジティブな感情がその判断を後押しするためである。
参考文献
「動機づけと情動」 今田純雄・北口勝也 培風館