AI生成の表示ルールが始まった日|発信者は何をすべきか

AI生成の表示ルールが始まった日|発信者は何をすべきか

はじめに

こんにちは、広報・制作担当のmeraです。

2026年8月2日。AIで作ったものに「AIで作りました」と示させるルールが、この日から動き出しました。EUと、アメリカ・カリフォルニア州で。しかも同じ日にです。

ただし、義務がかかる相手はかなり限られています。そこを取り違えると必要のない不安を抱えることになるので、この記事では「誰に、何が」を先に切り分けます。

カリフォルニアの日付は、もとは2026年1月1日でした。2025年10月13日に署名されたAB 853という改正法が、これを8月2日に動かしています。州の議会分析にも知事の署名メッセージにもEUへの言及はないので、狙って揃えたと断言はできません。ただ結果として、大西洋をまたいだ2つの規制が同じ日から同じ方向を向き始めました。

なお、この記事に出てくる日付はすべて現地の暦です。時差があるぶん、先に動き出したのはEUのほう。日本時間に直すとEU側が8月2日の朝、カリフォルニア側が同じ日の夕方にあたります。日本から見ても、8月2日は8月2日のままでした。


この記事でわかること

  • 8月2日に始まったルールが、誰に何を求めているのか
  • 「来歴(プロベナンス)」という考え方と、その限界
  • 日本でブログやSNSを書いている人が、明日から何をすればいいか

8月2日に何が始まったのか

EU側で動き出したのは、AI法(AI Act)の第50条です。義務は立場で4つに分かれています。

AIシステムを作って提供する側(プロバイダー)には2つ。相手がAIだと分かる設計にすること、そして生成・加工したコンテンツに機械が読めるマークを埋め込むこと。それを使って世に出す側(デプロイヤー)にも2つ。感情認識や生体分類を使うなら知らせること、そしてディープフェイクを公開するなら「これはAIで作ったものです」と開示すること。

ディープフェイクの定義は第3条にあり、実在の人物・物・場所・団体・出来事に似ていて、本物だと誤認させるもの、とされています。ドラゴンや生身で空を飛ぶ人のような明らかに非現実的なものは含まれません。映画や風刺作品に含まれる場合は、鑑賞を妨げない形での表示、たとえばクレジットや説明欄での明記が認められています。

制裁金は最大1,500万ユーロ、または全世界年間売上高の3%のいずれか高いほう。ただし第99条(6)に逆転規定があり、中小企業やスタートアップについては「いずれか低いほう」が上限になります。なお第50条(2)の機械可読マークについては、8月2日より前から市場に出ていた生成AIシステムに限り2026年12月2日までの猶予が入りました。適用開始の13日前、2026年7月20日には欧州委員会が第50条の最終ガイドラインを採択しています。

カリフォルニア側は AI Transparency Act です。対象は月間100万ユーザーを超える生成AIの提供者。目に見えないメタデータ(latent disclosure)を生成物に埋め込むこと、誰でも無料で使える判定ツールを公開すること、利用者が見えるラベルを付けられる選択肢を用意すること。対象は画像・動画・音声で、テキストは入っていません。罰則は1違反あたり5,000ドル、違反した日ごとに別の違反として数えられます。

そしてここからが発信者にとっての本題です。2027年1月1日からは、大規模オンラインプラットフォーム(直近12か月の月間ユニークユーザー200万人超)に対して、投稿されたコンテンツに来歴データが入っているかを検出し、ラベルとして表示する義務が始まります。

黒猫キャラクターが、EUとカリフォルニアを示す2つの抽象的なルールカードの間で、デジタル画像に透明なラベルを付けているイメージ。AI生成コンテンツの表示ルールが同じ日に動き出したことを表している。

「来歴」とは、要するに何なのか

来歴、英語でいうプロベナンス(provenance)。もともとは美術品の世界の言葉で、「この絵は誰の手を経てここに来たか」という記録のことです。それをデジタルファイルに持ち込んだのが C2PA(Content Credentials)という規格になります。

やっていることはシンプルで、ファイルの中に「誰が」「どのツールで」「いつ」「どう編集したか」を署名付きで書き込む。技術仕様は2026年1月5日にバージョン2.3が公開されました。Googleは来歴の検証機能をまずGeminiアプリで提供し、検索とChromeにも順次広げると発表しています。Pixel 10のカメラアプリは、撮影したすべての写真に署名を付けます。AIで作ったものだけでなく、AIで作っていないものを証明する側にも同じ仕組みが使われ始めています。

私はAdobeのツールを25年ほど使ってきました。数年前、Photoshopの書き出し画面に「Content Credentials」という項目が増えたとき、正直に言うと何も考えずに素通りしていました。今はそこにチェックを入れるのが制作フローの一部になっています。あの頃スルーしていた小さなチェックボックスが、法律の名前で呼ばれる日が来るとは思っていませんでした。

ただし来歴は万能ではありません。スクリーンショットを撮る、画像を圧縮する、SNSにアップロードして再エンコードされる。この程度のことでメタデータは簡単に消えます。C2PAは証拠ではなく、あくまで手がかりです。「来歴がある=本物」ではなく、「来歴がない=何も分からない」というだけ。ここを取り違えると、ラベルのない古い写真がすべて疑わしく見えてしまいます。

黒猫キャラクターが虫めがねで、画像ファイルの処理工程を流れるメタデータの鎖を見守っているイメージ。圧縮や再エンコードで来歴情報が薄れていくことを表している。

日本の発信者に、これは関係あるのか

結論から言うと、ブログ記事の本文については、たいていの場合は法的な義務の外にいます。

EU第50条(4)の文章に関する開示義務には、条文そのものに大きな除外規定があるからです。人間がレビューまたは編集上のコントロールを行い、自然人か法人が編集責任を負っている文章は、対象から外れます。AIに下書きを手伝わせても、自分で読んで直して自分の名前で出しているなら、ここに当てはまります。カリフォルニア側にいたっては、対象が画像・動画・音声だけで、テキストはそもそも入っていません。

もちろんEU向けにサービスや広告を出している、欧州拠点から動画を公開しているといったケースでは確認が要ります。それでも、日本の個人ブログにEUの制裁金がいきなり飛んでくる、という話ではありません。

けれど本当に効いてくるのは、罰則ではなく仕組みのほうです。

プラットフォーム側が来歴データを読んで自動でラベルを貼る流れが始まります。カリフォルニアでは2027年1月から義務になり、Googleは検証機能をGeminiアプリから提供し始めました。つまり、自分で何も書かなくても、機械が勝手に「AI生成」と表示する世界がもう組み上がりつつあります。

後から機械に貼られるラベルと、自分で最初から書き添えたひと言。同じ情報でも、読む人の受け取り方はまったく違います。前者は「隠していたのがバレた」に見えて、後者は「最初から言っていた」になる。この差は、記事の内容がどれだけ良くても埋められません。

だからAI利用の明示は、罰則を避けるための作業ではありません。法的には書かなくていい立場だからこそ、自分から書く。それが自分のコンテンツの信用を守る作業になる、と考えています。


今日からできること

書いたところを、書く。 全工程を報告する必要はありません。「構成案はAIと壁打ちしました」「アイキャッチは画像生成AIです」「本文は自分で書きました」。この程度の一行を記事末に置くだけで十分です。むしろ細かすぎる開示は読みにくくなります。

画像の来歴を、途中で壊さない。 生成ツールの書き出し設定でContent Credentialsを有効にしておく。そのうえで、リサイズや圧縮のツールがメタデータを剥ぎ取っていないかを一度確認してください。私も画像圧縮を挟んだ時点で来歴が消えていたことがあり、工程を組み替えました。

表記のしかたを、サイト内で1つに決める。 記事ごとに書き方が違うと、書いていない記事が「AIを隠した記事」に見えてしまいます。文言と置き場所をテンプレート化して、全記事で同じにしておくのが安全です。


まとめ

  • 2026年8月2日、EU AI法第50条とカリフォルニアAI Transparency Actが同じ日に動き出した。カリフォルニアは施行日を1月1日からこの日に延期している。
  • 求められているのは、機械が読めるマークと、人が見て分かるラベルの両方。来歴(C2PA)はその土台だが、スクショや圧縮で簡単に消える手がかりでしかない。
  • 人間が編集責任を負うブログ記事の本文は、EUの開示義務の対象外。カリフォルニアもテキストは対象にしていない。それでもプラットフォーム側が自動でラベルを貼る時代になるため、自分で先に明示しておくことが信用を守る。

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参考文献・出典


アイキャッチ・図版は、特記のない限りAIで生成した画像を画像編集ソフトで加工して制作しています。人物・イベントの写真は実際に撮影したものです。