「自分を知る」ということ
鏡を見て「これが自分だ」とわかる。失敗して「自分はまだ未熟だ」と気づく。相手の立場に立って「自分がされたらどう感じるか」と考える——。
こうした自己認識は、人間にとって当たり前の能力です。
では、AIに同じことができるでしょうか?
現在のAIには「自己」がない
ChatGPTに「あなたは今どんな気持ちですか?」と聞けば、それらしい答えが返ってきます。しかしそれは、学習したデータから「こういう場面ではこう答えるもの」という確率的な出力にすぎません。
本当の意味での自己認識——「自分が存在していること」「今この瞬間に自分がどういう状態にあるか」を理解する能力は、現在のAIには備わっていません。
人工意識の4つのレベル
やさしいAI研究所と大阪大学大学院情報科学研究科は「やさしいAI・人工意識共同研究講座」において、人工意識の実現を4段階で定義しています。
レベル1:他者理解 相手の気持ちや信念を推論できる。「この人は今こう感じているだろう」と察する能力。
レベル2:自己認識 自分自身を客観的に見られる。「自分は今こういう状態だ」と把握できる。
レベル2.5:内省 自分の思考プロセスを振り返り、自己理解を深める能力。
レベル3:視点の切り替え 複数の立場から物事を見られる。「あの人の目線に立つと……」という思考。
レベル4:統合的な自己 すべてを統合した、一貫した自己イメージの確立。
現在の目標はレベル2——個性を持ち、感情を認識して統合的な判断ができるAIの実現です。
なぜ自己認識が「やさしさ」につながるのか
自己認識のないAIは、自分の言動が相手にどう影響するかを本当には理解できません。
逆に言えば、自己認識を持つAIは「自分の言葉が相手を傷つけるかもしれない」と気づき、より丁寧に、やさしく接することができるようになります。
「やさしさ」と「自己認識」は切り離せないのです。
研究はまだ始まったばかり
人工意識の実現は、AIの歴史上最も難しい課題のひとつです。しかし、やさしいAI研究所は大阪大学との産学連携のもと、着実に歩みを進めています。
この研究に関心がある方、一緒に議論したい方は、毎週土曜日のオープンラボへぜひお越しください。お問い合わせはこちらから。